一般社団法人 日本薬剤疫学会

すべての人々により安全な医薬品を

理事長挨拶

 

 日本薬剤疫学会は1995年に30名の発起人により日本薬剤疫学研究会として発足しました。その発起人の中には、私が直接ご指導を受けた楠正先生、佐久間昭先生、開原成允先生、大橋靖雄先生などがいらっしゃいました。それから30年以上が経過し、これまで当学会が存続し発展してきたのは、本学会員お一人お一人のご支援の賜物であると思い、心より感謝申し上げます。上記の恩師といえる先生方は既に鬼籍に入られ、弟子達やまた新しい人達が今日の薬剤疫学会を運営しており、世代交代が進んでいます。しかし私は設立当初より会員である者として、設立者達の思いや功績を大切にしながら、さらに当学会の発展に尽くして参りたいと存じます。

 薬剤疫学は、過去のサリドマイドのような被害を二度と繰り返さないために誕生し、薬剤疫学の英名であるPharmacoepidemiologyの編者で著者のStrom先生は「人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する学問」と少し広く定義しました。そして当学会の初代理事長である楠先生は薬剤疫学を「人の集団における有害事象の発生と医薬品使用との関連を研究し、医薬品の適正使用に結び付ける学問」と定義されました。このように薬剤疫学の第一義的な目的は、医薬品の安全性評価に対して疫学的手法を用いることであり、それは今後も基軸となります。さらに市販前の医薬品開発は有効性・安全性の評価として限界があることから、最近では市販後も電子カルテやレジストリなどのリアルワールドデータに対して薬剤疫学の手法を適用し、安全性のみならず有効性も評価し、リアルワールドエビデンスを構築していくという新たな動きもあります。それには技術的基盤である医療情報学や統計学といった分野との協力が重要で、そのような学会との連携も強化していきたいと考えています。プライバシーに配慮しつつ施設を超えて細かな健康・医療情報を収集できる次世代医療基盤法に基づく医療データベースの解析にはさらなる大きな可能性もあると考えています。

 また自分自身のICHでの経験などから薬剤疫学を実学として発展させる上で、国内外において産官学の連携も強化していく所存です。中でも国際薬剤疫学会(ISPE)やアジア薬剤疫学会(ACPE)への協力は重要で、特に漆原前理事長がchairを担う2028年の日本でのISPE Annual Meetingについては、成功に向けて支援して参ります。
さらに私が理事長在任中には本学会員にとって拠り所となるような、日本人の、日本人による、日本人のための薬剤疫学の教科書を学会として取りまとめたいと思っております。今後も薬剤疫学の普及と発展のため、皆様から引き続きご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人日本薬剤疫学会
理事長 小出大介
東京大学大学院医学系研究科
生物統計情報学講座 特任教授