日本薬剤疫学会

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理事長挨拶

 

理事長 久保田 潔  



日本薬剤疫学会
理事長 久保田 潔
(東京大学大学院医学系研究科薬剤疫学講座特任教授)


薬剤疫学は、人の集団における薬物使用による効果と副作用を疫学的手法を用いて研究する学問です。

 

仮説を明確にしてこれをテストする「正統的」疫学研究とともに、仮説の生成(新たな副作用の発見や、既知の有効性や副作用に関する新たな問題の発見など)も薬剤疫学の重要な分野です。

また、催奇形性など重大だが予防可能な薬のリスクを最小限におしとどめ、薬のもつ有用性を最大限にひきだすための「リスク最少化ツール」の作成・評価など、薬の「リスク管理」の系統的アプローチが薬剤疫学に関心をもつものにとっての重要な課題として認識されつつあります。

「我が国では1970年代から使用成績調査(の前身の副作用調査)が開始されるなど、一早く制度的整備が進められました。日本の制度は韓国などにお手本として「輸出」されましたが、次第にデータベース研究を中心に薬剤疫学の急速な発展が進む欧米ばかりではなく、大規模データべースの実利用が進む韓国や台湾の後塵を拝するに至っています。

 

当面薬剤疫学会に必要なこととして以下の三点を挙げたいと思います。

 

第一に、国際的な会議を我が国でより多く開くなど、欧米のみならず韓国や台湾などアジアの関係者との交流をより深め、学ぶべき点は虚心坦懐に学ぶことです。

 

第二に、2011年からの稼働に期待が寄せられているレセプトデータベースについて積極的に発言し、データベースを用いた薬の安全性と有効性に関する質の高い薬剤疫学的研究が可能となる条件を整える努力をすることです。

 

第三に、リスク最小化を含む薬のリスク管理を日本薬剤疫学会としても積極的に取り上げることです。

 

薬の国際開発が進み、新薬をより早く享受できるメリットとともに、市販前の試験における日本人の数が少なく、リスクの把握が十分とは言えないまま新薬が市場にでることも多くなりました。日本薬剤疫学会が果たすべき役割はますます大きくなっています。

 

疫学研究を専門とする医師、薬剤師、統計家はもとより、より多くの医療関係者の学会への参加を願ってやみません。

2008年12月